軽井沢から戻って来たら、東京ももう晩秋のような冷え込み。
重い腰を上げて衣替えをしていたら、ロフトから古い書き込みノートが出てきた。
人生の優先順位(今・昔)
54歳。シンガポール駐在に出る前に、自分の今の立ち位置と今後取るべき優先事項を纏めたノート。
短期的には在職中のライフバランスについて、中期的には退職した後の生き方をおぼろげながら想像してのステップを意識したもの。
45歳でマレーシアに駐在、こんな小さな市場で当時会社の方向性を決めるビジネスモデルをお前がやってみろ的に送り出されてから、かなり強い中毒性を持って仕事にのめり込んだ10年間だった。
そして仕事に前のめりのまま今度はシンガポールに赴任するにあたり、自分の人生の軸足を何処に置けば良いのかを一度確認しておきたかった。
相変わらず仕事は大好きだったが、長くても後10年しか居ない会社が一番大事な訳じゃない。自分にとっての人生の優先事項は?
整理の仕方としては
1.何故それが大事か?
2.希望する結果(短期・中期に分けて)
3.そこに辿り着くまでにやること
その中で優先順位とその理由、そして現在の立ち位置について備忘録として記しておこうと。
1. 家族
何故か?
1) 人生の支えだから
2) すべてのモチベーションンの源だから
3) 喜怒哀楽を共にしたいから
4) 一番幸せになってほしい人々だから
先ずは8年前もやっぱり ”家族” が最初なんだなという気持ち。
奥さん・息子・両親・姉・・今ではボーロも含まれるだろう。
基本的にはみんなが健康にそして穏やかに過ごしていければ良いと、そこは今も同意かつ継続出来ているとして、神様仏様ご先祖様に感謝したい。
息子についてはまだまだ人生が長いので追加の望みもあったが、これも本人の人生。
件のノート作成後無事海外で高校を卒業、日本に戻って大学に進み良い仲間にも恵まれたけど、この2年間はいろんなチャレンジがあり、まだ本人自身がロストしている状態。
多様性が認められつつあるこの現社会に感謝しつつ、また息子がしたいことを見つけてそこに飛べることを祈りつつ、静かに見守りたいと思う(やれやれ)。
2. 健康
何故か?
1) 健康でないと仕事が高いレベルで出来ないから
2) 健康でないと日常生活が不便だから
3) 健康でないと余生が楽しめないから
4) 健康でないと周囲の人々に迷惑をかけるから
5) 健康でないと予期せぬお金がかかるから
この健康についても継続して留意出来ているだろう。日々の自重運動とウォーキング、身体を温める生活と笑いが絶えない家での夕食等々。
しかし・・当時は「仕事の為に健康でなければ」が一番目に来るあたりが笑える。
今は「豊かな人生を出来る限り延伸させる為の健康」が最初に来ることは言うまでもない。
3. 仕事
何故か?
1) 1日の半分を費やす仕事にやりがいを持ちたいから
2) 社会と接することが実感出来るから
3) 人にも家族にも認めて貰いたいから
4) 休日を楽しく過ごしたいから
5) 経済的な余裕を持ちたいから
ノートに記してあることをそのまま記してみたが、どうにも俗っぽい理由ばかりだ(笑)
5) が一番の理由になる人も多数だと思うが、そうではなかったボクが60歳までサラリーマンを演じた理由はなんだろう。
「その仕事が天職だった」と思えた57歳までの自分で終わればハッピーエンドだったが、逆に必ずしもそうではなかった最後の3年間があったので、定年後の今は「酸いも甘いももう十分にやり切った」と自己納得出来ているのかな。
自分の良いように解釈するのも年相応のスキルかも(笑)
4. 趣味・仲間
何故か?
1) 仕事とバランスをとりたいから
2) 仕事を辞めた後の楽しみを担保したいから
3) 新たな自分を発見したいから
4) 仕事以外にチャレンジ出来るものがほしいから
このノートに記した時は、実は仕事と家族のバランスはとれていたと思う。と言うか当時はそれだけで精一杯だった。
今思えば、1) 仕事とのバランス・・ではなくて仕事を辞めた後の懸念を 2) 以降で触れていたと思う。
じゃあ、晴れて定年退職した後で自分自身何に取り組んできたのか?
健康管理士資格の獲得? 日本語講師養成学校の卒業?そこで出会った仲間たち?
今は分からない・・現状が不満足かと言えばそんなことはないが、もっと幸せになれるとは思う。
5. 社会貢献
何故か?
1) 今迄助けて貰ってばかりだったから
2) この世に生まれてきた意義を確かめたいから
3) 少しでも世の中を良くすることに役に立ちたいから
4) 誰かに喜んで貰いたいから
今読み返すと顔から火が出るほど恥ずかしい(汗)
でも当時は欺瞞でも何でもなく、本当にそう思っていた。4) については今でもそういう気持ちは少なからずあるし、1) についても自身のリーマン人生を振り返ればその通り。
でも 2) や 3) の思いは今は全く無い。
先ず自分が幸せになることを軸とする。あくまで主語は自分自身。
人を幸せにすることで自分の幸せを感じるのを今は理解しているし、逆に自分が幸せになることで結果的に人に喜んで貰うこともあるだろう。日本語ボランティア活動など後者の類だろう。
少なくとも自分が幸せになる為に人を不幸にすることなど無い。そう言える人生は送ってきたと信じたい。
だからいいんです。自己満足の人生で。
さて・・
折角衣替えをしたばかりなのに先週は初夏のような暖かさ。
湘南のヨットハーバーでボーロと散歩を楽しんでいると・・サンデッキのテーブルでパソコン作業をしている懐かしい顔を見つける。
ボクのシンガポールのポジションを引き継いだ男
その後ヘッドハンティングでライバル会社に引き抜かれた男
それでもボクの現役最終日の挨拶の時、激励のビデオメッセージでボクをびっくりさせてくれた男・・・
「Hi, long time no see! こんな晴れた日に屋外リモートワークなんて最高じゃないか」
お互いに簡単な近況報告をして、それから今の業界について30分程聞く。
やれやれ・・やっぱりボクは仕事が好きだったんだ。
シンガポールではお互い共通の悩みを持ち、日本に戻りボクは間も無く引退、一方彼は新天地でやりたいことを仕事にしている。
でも別れ際にちゃんと言ったよ。
「リモートワークもいいけどワークフリーはもっと楽しいかもよ。」
ボクより一回り若い彼は屈託の無い笑顔で頷いた。
All the best!
それではShanti Shanti! 素晴らしい1日を!